あっという間に9月が終わり、10月に入りましたね。今週はカナダは木曜日が今年から始まったNational Day of Truth and Reconciliation(真実と和解の日)でお休みでしたので、木曜日が金曜日のような気がする、ちょっと調子の狂う不思議な週でしたが、いろんなことがあり、いろんなことを考えさせられた週でした。
今週は、Shame(恥)がキーワードでした。(日本時間)水曜日ブレネーブラウンのDaring Greatlyを読んでいるクラハでのブッククラブで、学校や社会でShame(恥)を使ったマネジメントが多いと誰も関わりをもたなくなる=Disangegmentが起こる、という章を読んでいました。その章では、研究対象者の85%が、学校で起こったShamingな出来事を覚えているというリサーチ結果が紹介されており、学校では特に美術や音楽などのアート系の授業で、他人と比較されたりけなされたりからかわれたりというCreativity Scar(創造性の傷)を受けることが多いと書かれていました。その席で、塚越悦子さんが「人によっては、何がShamingであるか分からない人もいるのでは?」というコメントをしてくださり、もうすこし深堀りしたいと、急遽翌日TwitterのSpacesでもShameについて話しました。Shameについてはブログに書きましたので興味のある方は読んでみて下さい。また、今週のはみライでも話しています。
木曜日は、National Day of Truth and Reconciliationでお休みでした。カナダ各地で先住民の人々との和解に関したイベントが開催されたようです。私はというと、秋から始まったプロジェクトのミーティングが入っていて、今年から始まった休日なのでミーティング参加者の誰も直前まで休日にミーティングを入れていることに気がつかず、そのまま参加したのですが、参加者みんながオレンジの服を着ていました。
9月にはこの休日ができるまで、Orange Shirt Dayという日があり、休日ではなかったものの、少しずつ知名度も広がってきていた日でした。そのきっかけは先住民のPhillis Webstadのストーリにもとづいています。1973年、6才の時にフィリスはミッションにあるインディアン寄宿学校に入学しました。家族はお金はあまりなかったけれど、学校の最初の日のためにおばあちゃんがオレンジ色のシャツを買ってくれました。当日ワクワクしてフィリスはそのシャツを着て行きましたが、学校でそのシャツは剥ぎ取られ、フィリスは二度とそのシャツを見ることはありませんでした。それ以来、オレンジ色は、フィリスにとって、彼女の気持ちはどうでもよくて、誰も気にかけてくれなくて、自分には何の価値もないと感じたことの象徴になりました。フィリスは13才の時に長男を出産します。
以下はorange shirt dayからの抜粋と拙訳です。
I went to a treatment centre for healing when I was 27 and have been on this healing journey since then. I finally get it, that the feeling of worthlessness and insignificance, ingrained in me from my first day at the mission, affected the way I lived my life for many years. Even now, when I know nothing could be further than the truth, I still sometimes feel that I don’t matter. Even with all the work I’ve done!
私は27歳の時に治療センターに行き、それ以来、この癒しの旅を続けています。ミッションに参加した最初の日に植え付けられた自分には価値がないという感覚と無意味感が、長年の人生に影響を与えていたことが、ようやくわかりました。今でも、私は自分が重要ではないと感じることがあります。これだけの仕事をしていてもです。
ここまで読んで、これもフィリスが感じていたのはまさしくShameだということが分かると思います。
今年の春にカムループスのインディアン寄宿学校跡地に215人の子ども達が埋葬されていることが発覚して以来、カナダ各地の寄宿学校跡地にて似たような埋葬が確認され、これを受けての「真実と和解の日」設立となりました。当日は各地でのイベントに参加したり、2015年に発行された(なのにカナダ政府が殆ど手を付けていない)「和解のためのアクション」を読むなどという形で過ごした人が多いようです。私も当日はオレンジのシャツを着てミーティングに参加したのですが、参加者は私がビクトリア、そしてカルガリーとモントリオールから参加していて、びっくりしたのがケベックではこの日が休日になっていない?とのこと。
カルガリーからの参加者が「フレンチカナディアンだって移民みたいなもので外国から来た人だから先住民問題に同情的だと思ったんだけど」というとモントリオール在住の参加者が「あなたは優しいのね。私はそんな風に同情的に思えない。フランスからやってきた人達はColonizerでカナダの植民地化に協力したOppresserと同じじゃないの」と言っていたのが印象的でした。
金曜日には別のプロジェクトのミーティングで、日系アメリカ人4世の女性とお話しました。彼女の両親、祖母も教えてくれなかったので日本語はせないそうですが、今アプリを使って勉強中だとか。彼女と話をしていて、以前とあるポッドキャストのためにインタビューした先住民の男性のことを思い出しました。先住民の人々にとっても彼らの言語が絶滅しかけている(その原因はインディアン寄宿学校)ことは深刻な問題です。彼も自分の種族の言語を勉強中と言っていましたが、その時彼が”Language makes me whole”と言っていたことをよく覚えています。私のように母国から離れている人間にとっても継承語というのは大きな問題です。私の息子達も日本語は流ちょうではないので、もう少し真剣に日本語を伝えていかなければいけないなと思いました。
今週はまたブリトニー・スピアーズの財産などを管理するConservator(成人後見人)である実の父親ジェイミー・スピアーズがその職から解任されたことが話題になりました。
今年の初めに出たFraming Britney SpearsというドキュメンタリーはYouTubeで観ましたが、今週はさらにBritney vs SpearsというRolling Stone誌に寄稿していたジャーナリストが出ているドキュメンタリー(Netflix)と、New York TimesのポッドキャストThe DailyでもフィーチャーされていたControlling Britney Spears(Hulu/Crave)も見ました。インタビューしている人達はオーバーラップしつつ少し違う程度でどちらも内容にはさほど変わりはなく、後見人制度が認められた背景、そしていかにブリトニーに自由がなかったか、通常は自分で決断する能力の無い人に後見人が必要とされるのに、ブリトニーは世界ツアーやラスベガスでのResidencyなど働きづくめで、周りの人にいかにお金を稼がせたかなどが描かれています。
見ていると、「なんで13年もこんな馬鹿げた後見人制度が続いてしまったのか」と思うのですが、他人をコントロールすることって実は意外と簡単なんだなと恐ろしくなりました。ただ、この#FreeBritney運動は去年あたりからファンを含め沢山の人の支持を得てきていて、やはり世論の力というか、声をあげることの大切さを思い出させてくれました。
今週のClubhouseでの「読み解く英語:Next Level English」ではマヤバーダマンさんとこのブリトニーの成人後見人問題についての英語ニュースを読み解いていきます。
今朝はClubhouseでHandmaid’s Taleについて話す回をやり、とても盛り上がりました。またやりたいと思いますので興味のある方は教えて下さい。
今週読んだ本
ブッククラブでは引き続きBraving the WildernessとYou Are Your Best Thingを読んでいます。特に今週You Are Your Best Thingで読んだTracey Michae’l Lewis-GiggettsのBlack ChurchでのShameに関するストーリーにはとても心打たれました。黒人の教会でShameを使って若い女性をコントロールしようとしているのは実は裏に貧困層の黒人のステレオタイプである若いシングルマザーになって欲しくないという愛があるからだ、とか、教会でのバイナリ思考(これをすると天国に行ける、これをやると地獄に行くなど)がFaithではなくCertainty寄りになっていることへの懸念などが書かれていてとても納得しました。FaithとCertaintyの違いについては私も過去に書いているので良かったら読んでみて下さい。
そして引き続き「極北」を読んでいます。あと20%くらいかな。
今週聴いたポッドキャスト
今週はFreshAirで2つとても良いなと思うエピソードがありました。
Anita Hill
ひとつは30年前に最高裁判事候補者だったClarence Thomasからのセクハラを公表したAnita Hill。セクハラを公表したにもかかわらずClarence Thomasは最高裁判事に就任し、現在もその職についています。アメリカの最高裁では2018年にもChristine Blasey Fordが同じく最高裁判事候補だったBrett Kavanaughを大学生時代のセクハラで告発しましたがこちらも何のお咎めもなくKavanaughも判事になったという歴史があります。Anita Hillは最近メモワールを出版したそうでインタビューに答えてしましたが、「結局何も変わらなかったのに名乗り上げたことに意味があるのか?」という趣旨の質問にThere is a victory in being able to come forward と言っていました。Anita HillやBlasey Fordの例を見て、「だから私はセクハラの告発はしない。なにも代わらないから」と思う女性も実際沢山いると思いますが、Hillの、声をあげることができただけで勝利なんだという言葉に勇気づけられました。
Tarana Burke
もう一つのFresh AirのエピソードはMe tooムーブメントの創始者Tarana Burkeが自伝”Unbound”を出版したことにちなんでのインタビューでした。今ブッククラブで読んでいるYou Are Your Best ThingもTarana Burkeが編集者なので、こちらの自伝もぜひ読みたいと思いました。ここでも、性的暴行を受けたことによる恥の話がでていました。
Twenty Thousand Hertz
先週も少し書きましたが、10月はBlind Awareness Monthとのことで、今回のエピソードでは盲目の方がやるスポーツが紹介されていました。Beep Baseballは音のでる球(ソフトボールよりも大きい)を使ってやる野球で、ベースの代わりにフォーム製のスタンドが立ててあり、それにタッチすることでベースに到達するのと同じようにプレイできるそうです。視覚には差があるので、プレイヤーはみんなアイマスクをしてプレイするなど、初めて聴いたことばかりでとても興味深かったです。Beep Baseballの動画を見つけたので見てみて下さい。
今週観たTV・映画
Squid Game
上に書いたようにBritneyVS SpearsとControlling Britney Spears 以外に見たのは、
今大人気の「イカゲーム」
私は韓国ドラマは意識して見ないようにしているのですが、これはNetflixが配信されている国でインド以外の国で1位になったという化け物的番組なので見てしまいました。
普通に面白かったです。最後のエピソードが一番面白かった。
Love on the Spectrum
その後はシーズン1がとても良かったLove on the Spectrum シーズン2を見始めました。
Autism Spectrum(自閉症スペクトラム)を持っている人達のデートの様子を追うドキュメンタリー・リアリティ番組ですが、シーズン1からのキャストに数名新しい人達が加わって、パートナー探しに一喜一憂する様子が描かれています。本当に、自閉症の人達には悪人がいないというか、憎めない人達ばかりで、デートで緊張して話せなくなってしまったりすると思わず声をかけそうになるくらいです。今回見ていて思ったのは、自閉症の子どもを持つのは大変なことだろうけど、親にとっては常に喜びの種でもあるだろうなということ。周りの家族や友達が彼ら・彼女らの話を常にニコニコして聞いているのが印象的です。
MAID
これはNYタイムズのベストセラーになったStephanie Landの小説 Maid: Hard Work, Low Pay and a Mother's Will to Survive のドラマ化ですが、私の住んでいるビクトリアで撮影され、実はエキストラとして参加しました。原作は読んでいないのですが、自分も関わった作品ということで興味本位で見てみましたが、イカゲームのようなメガ予算の番組ではなく、大スターがでているわけでもない(主役の女性はアンディ・マクダウェルの娘Margaret Qualleyで、アンディ自身も主人公の母親役で出演しています)にも関わらず、貧困とパートナーからの虐待に苦しむシングルマザーの様子に思わず見入ってしまいました。自分が関わっていなくても面白い番組だと思いましたので引き続き見ていきたいと思います。
【お知らせ】
日本時間10月4日(月)夜8:15ごろ、J-WAVEのJAM THE PLANETという番組にカナダからのコレスポンデントとしてちょこっと出演します。
はみライにも以前ゲストで来て頂いた不妊治療ののち子なしの人生を歩むと決めたボレンズ真由美さんのポッドキャストFlowにて、ヴァルネラビリティについてお話しました。
日本時間10月7日(木)夜10:30からClubhouseで塚越悦子さんと「ヴァルネラビリティ・アノニマス」のお部屋をやります。自己開示の練習のお部屋です。発言出来る方のみお越し下さい。ヴァルネラビリティ・アノニマスのルールはこちら。
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